別の記事「ほぞ加工用治具の自作|トリマーで正確なほぞが作れる治具①」では、ほぞ加工をする時の差し込む側(オス側)のほぞを正確に作るための自作治具を紹介しました。
この記事では、そのほぞに適度な大きさの(ゆるくもなく、きつくもない)ほぞ穴が作れる治具を紹介します。
2つの記事をセットで読むことで、今まで職人だけにしか作れないと思われているほぞ加工が、木工DIYの初心者の方でも、出来るようになります。
ほぞ穴加工治具の特徴
この治具の仕組みは、別の記事で紹介した「トリマー用大入れ継ぎ治具の自作」で紹介した治具と原理は同じものです。
今回紹介するほぞ穴用加工治具の特徴は、下記3点です。
このことをもう少し具体的に説明すると、
押し込む側のほぞの大きさを、治具に写し取って行く
というものです。
設計図上で決められた寸法に引かれた墨線を加工する場合、どうしてもほんのわずかな墨線の誤差や加工時の誤差が発生してしまいます。
ほぞ加工の場合、ほぞ穴がほぞよりちょっとでも大きいと、ほぞがブカブカになって強度が落ちてしまいます。
ちょっとでも小さいと、ほぞがきつくて入りません。
ほぞ加工は、そんなわずかな誤差が出てしまうことで、素人には敷居が高く、挑戦しづらい加工だと感じている方が多いと思います。
そのほぞ加工の高い敷居を低くする方法が、ほぞの大きさを現物合わせで写し取って、ほぞ穴を掘る方法です。
このほぞ穴加工治具は、現物合わせで押し込む側のほぞの大きさを写し取って行くので、基準がほぞ側になります。
したがって、ほぞ側の大きさにわずかな誤差があったとしても、どのほぞにもぴったりのほぞ穴を掘ることが出来ます。
今回紹介するこのほぞ穴治具は、この特徴があるためほぞ穴の加工の失敗を少なくすることが出来ます。
加工の時に使うトリマーには、今まで使って来たストレートビットではなく、「スパイラルアップカット」という刃がスパイラル(らせん状)になったビットを使います。
スパイラルカットには、スライラルアップカットとスパイラルダウンカットの2種類があります。
2種類のスパイラルビットの比較
刃の向き | 切り屑が出る方向 | 力の方向 | 刃の動き | |
アップカット | 上(軸側) | 上 | 上 | スムーズ |
ダウンカット | 下(刃先側) | 下 | 下 | やや抵抗あり |
私はこのサイトで、安全面から常にトリマーのビットを下に向けた加工姿勢を推奨しています。
それを前提にすると、私はスパイラルアップカットの方をお勧めします。
アップカットとダウンカットの一番大きな違いは、ビットに刻まれた刃の向きです。
アップカットは文字通り、刃の方向である上(軸側)に向けて削り屑が送り出されます。
溝の加工には、切り屑が溝の中に溜まることが少ないため、ビットの動きがスムーズです。
ただ、絶えず上に向かって刃が動いているので、板材を持ち上げる力が発生しています。
このことは、トリマーの加工時には必ず板材をクランプで固定しているため、通常使うストレートビットと同じ感覚で作業が進められます。
このビットを使用する理由は、穴をくり抜くというビットに大きな負担を掛ける加工をするため、切れ味のいいビットが必要だからです。
切れ味がいいビットは、ビットに負担が掛からないことと、作業音を低下させるメリットもあります。
ほぞの種類の中には、「通しほぞ」という加工があります。
ほぞ穴が貫通し、外側からほぞの木端面が見えるほぞ加工です。
電動ドリルで貫通する穴を開ける時、もし当て板を下に敷かないで貫通穴を開けると、ビットが突き出る出口には、必ず欠けやバリが発生してしまいます。
でもこのスパイラルビットで敷板をしないで通しほぞ穴の加工しても、出口付近にはバリや欠けがほとんど発生しません。
それだけ、切れ味のいいビットだと言えます。
別の記事「トリマー用大入れ継ぎ治具の自作」で紹介した「大入れ継ぎ」加工に使う治具は、オス側になる板材の厚みに応じて、治具をその都度クランプで固定します。
ほぞ穴加工治具は、クランプではなく、手間なくボルトノブでその大きさを固定出来るようにしてあります。
【ほぞの大きさが小さい場合】
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【ほぞの大きさが中ぐらいの場合】
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【ほぞの大きさが大きい場合】
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ほぞ穴加工治具の設計図
このほぞ穴加工治具は、ベース部分とその上に乗せて動く連結部の2つに分かれています。
【ベース部】
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【連結部板取図】
連結部は下記の170mm x 155mmの合板を板取図に基づいて、L字型の2枚(濃い色の箇所)が残るように切り離していきます。
切り取ったL字型の部材は、ベース部分の上に乗せ、ボルトノブで固定して使います。
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必要な工具
・電動トリマー
・スパイラルアップカット ビット
(軸径は6mmか6.35mmのどちらでも可)
・電動ドライバー
・座ぐりビット
・電動ドライバースタンド(ボール盤)
・ジグソー(連結部の切り離しで使用)
・M6用ネジ山タップ(ネジ山を刻む工具)
・スコヤ
・センターポンチ
・M6用タップ No.1 No.3(メスネジ部を切るのに使用)
・M6ボルト 長さ25mm 4本(連結部で使用)
・M6ボルト用 平座金ワッシャー 4枚(連結部で使用)
・M6用ボルトノブ 4個(連結部で使用)
・長さ10mm 〜15㎜の皿ネジ 8本(ベース部の固定に使用)
・両面テープ(ベース部の仮止めで使用)
必要な部材
【ベース部】
パイン集成材(トリマーガイドフェンス用):
18mm x 40mm x 200mm 2枚
18mm x 40mm x 130mm 2枚
シナ合板(合板)
(ベース部分のトリマー用ベース部に使用):
5.5 mm x 90mm x 240mm 2枚
【連結部】
シナ合板(合板):
5.5mm x 155mm x 170mm 1枚
*設計図の板取図に従って墨線を引き、切り離して行く
ほぞ穴加工治具の製作手順
治具のベース部分の製作手順
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ベース部分になる、シナ合板(合板)5.5mm x 90mm x 240mm にパイン材のガイドフェンスになる 18mm x 40mm x 200と18mm x 40mm x 130mm を直角になるようにスコヤを当て、仮止めをします。
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もう1セットも同様に、直角を確かめながら仮止めをします。
ネジ止めの位置は、後ほど治具の連結部にネジのメス側になるネジ山を刻むので、その穴と重なるのを避けるために設計図上に示した4カ所にしるしを付けて下さい。
ガイドフェンス側を下にして、ベースプレート側のネジ止めする4ヶ所にしるしを付け、センターポンチでガイド穴を開けて行きます。
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治具を置いた時にネジの頭が出ないように、ネジ山がベース底面より下になるように座ぐりをしておきます。
2セットそれぞれに、ガイドフェンスとベーブプレートの4ヶ所にネジ止めをして行きます。
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この次の行程は、トリマーでベースプレートを欠き取って行く作業にになります。
その前に、この治具特有の留意点を先にお話ししておきます。
実際に治具を使う時のトリマーの動きは、下記のようにガイドフェンスに沿って時計回りに動かして行きます。
【トリマーを動かす方向】
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このトリマーの動きをもう少し説明すると、下記のようになります。
加工を開始する時のトリマーは、通常と同じようにトリマー本体の下部の開口部が左側のガイドフェンスに向けられています。
その後、ストッパーに当たり、右方向に動かして行きます。
右側の治具のストッパーの端まで来ると、今度は手前に向かってトリマーを押し下げて行き、下のストッパーに当たってから、左に向かい1周します。
このことから、トリマー本体の開口部の向きは、左右の治具を通過する時に、向きが逆になって動いていることがお分かりになると思います。
したがって、2つの治具のうち、1つはトリマーの開口部がガイドフェンスの側に向いている状態でベースプレートを欠き取って行きます。
この向きで欠き取った治具が、加工を開始する時に最初にトリマーを乗せる治具になります。
トリマーの動きを説明した写真では、左側に置く治具です。
もう1つの治具は、トリマーの開口部がガイドフェンスとは逆に向いている状態でトリマーを動かしてベースプレートを欠き取って行きます。
このことで、ベースプレートの切断面と時計回りに動くトリマービットの動きが一致し、中央のほぞを写し取った空間に正確にほぞ穴を開けることが出来るようになります。
ここからは、トリマーを使って加工する段階に入って行きます。
まだ、トリマーを使ったことがなかったり、トリマーに興味のある方は、下記記事を併せて参考にしてみて下さい。
では、最初にガイドフェンスが左側(前側)になる方の治具のベースプレートを欠き取って行きます。
私の持っているスパイラルアップカットビットは、直径1/4インチのものです。
トリマーに 1/4 インチ用のコレットチャックを取り付け、スパイラルアップカットビットを取り付けます。
もし、スパイラルアップカットビットが6mm軸を使用する場合には、コレットチャックの交換は不要です。
【スパイラルアップカットビット】
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【コレットチャックの交換】
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治具の下に敷板を置き、治具のベースプレートを乗せ、敷板にビットが接地する位置でビットを固定します。
【ビットの突き出し量】
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治具のベースプレートの厚さは5.5mmなので、ストレートビットなら、ビットに負担を掛けてしまうため、突き出し量を少なくする必要があります。
でも、スパイラルアップカットビットの場合は、切れ味がいいので「分割加工治具」は不要です。
そのまま作業に進んで下さい。
トリマーのビットの突き出し量を変えずに、ビットの負担を減らす「分割加工治具」の詳細は、別の記事「自作トリマーガイドの使い方 |もっと使いやすく、もっと効率的に」の中の 「分割加工治具」でその使い方を紹介しています。
記事を読んでいない方は、そちらの内容も参考にして下さい。
治具が加工中に動かないように、作業台にクランプで固定します。
次にトリマー下部の開口部を左側のガイドフェンスに向け、トリマーのベースプレートをぴったりとガイドフェンスに当てます。
ビットが治具に接触していないことを確認して、トリマーのトリガーのスイッチを入れます。
(トリマーのビットが何らかの部材に接触したままスイッチを入れると、キックバックを起こして大変危険です。)
回転が安定したらゆっくりとトリマーを前進させ、治具のベースプレートを欠き取って行きます。
前方のストッパーになる副フェンスに当たったら、ゆっくりとトリマーを右側に移動し、作業音が変わったら欠き取りの加工は終了です。
ビットの突き出し量は、トリマーのトリガーを入れる手順もクランプで固定するのも右側の時と同様です。
違う点は、トリマー本体の開口部を右側のトリマーガイドとは逆の方向に向ける点です。
この向きでトリマーを動かすと、ビットは通常とは逆方向に回転しているため、トリマーはガイドフェンスから離れようとする方向に動きます。
トリマー本体をしっかりと持ち、ガイドフェンスから離れないように押し付け、ストッパーの副フェンスの位置まで移動させて下さい。
ストッパーに当たったら、右方向に移動方向を変え、作業音が変わったら加工は終了です。
欠き取ったベースプレートの切断面は、下記画像のようにビットの半分の径のR状になっています。
この部分に、直角になったほぞの角が挟み込まれます。
ほぞがしっかりと挟み込まれるようにこの角を直角に修正しておきます。
スコヤで角のR部分が直角になるように墨線を引きます。
【加工後のベースプレートの角の墨線】
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墨線に沿ってノミを当て、余分な箇所を欠き取って行きます。
欠き取る箇所はわずかなのでノミを手で押し込むだけで欠き取れます。
女性の方は、玄能を軽く叩いて作業してください。
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【欠き取り部の修正の完了】
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ガイドフェンを左側にして切り取った治具の角の修正が完了した時点で、も1つの治具と区別出来るように、左側(前側)と適当ん位置にマジックで書きこんでおいてください。
もう一方の治具のベースプレートの角も、同じようにノミで直角に欠き取って行きます。
こちらの治具にも、右側(後ろ側)の表示を書きこんでおいて下さい。
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この治具の仕組みは、治具のベース部分にネジ山のメス部分を刻んでおき、上の連結部から下のベース部分をボルトのネジで締めたり緩めたり出来るようにするものです。
そのためのネジ山を先に刻んでおきます。
設計図の正面図の下部に「M6用ネジ穴位置」と示した位置にセンターポンチで印を付け、ネジ山を刻んで行きます。
ネジ山を刻むには、タップが必要になります。
【タップセット】
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はめ込むボルトの直径に応じて、M5、M6、M8とサイズに別れて販売されています。
少し価格は高価ですが、あると加工中だけ、一時的に板材を固定させたい治具を作る時等にとても重宝します。
私の場合には、どんなサイズにも対応出来るセットのものを使っています。
一般的にはタップは金属にネジ山を刻むことを前提にとして作られているため、1つのサイズごとに No.1,No.2,No.3 の3種類が用意されています。
数字が上がるにつれて仕上げ用になりますが、木材の場合、材質が柔らかいので、No.1 とNo.3 の2本だけでネジ山がしっかりと刻み込まれます。
下記の画像の下部は、メスのネジ山を刻むタップのNo1,No3で、上はオス側のボルトとボルトを回しやすくするボルトキャップとボルトカバー、間に入れる平ワッシャです。
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【ネジ山をドリルスタンドで刻む】
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メスのネジ山は板材に垂直に刻まれていないと、ボルトがねじ込まれると斜めになってしまいます。
ネジ山の直角を確保するために、ネジ山を刻む時には、ドリルスタンドかボール盤を使用することをお勧めします。
今回は貫通する穴あけですが、どちらも所定の穴の深さを制御出来るので、失敗のない穴あけ作業が出来ます。
最初に、直径5mmのドリルビットで、設計図で示した位置の合計6ヶ所に貫通する穴を開けていきます。
ネジのサイズより、1回り小さな穴を開け、タップがネジ山を刻めるようにします。
貫通する穴あけなので、治具の下には、穴の出口に欠けやバリが発生するのを防ぐため、端材の当て木を敷き、クランプで固定しておいてください。
次に開けた穴にM6用のタップのNo.1 をドリルチャックに取り付け、回転する速さを出来るだけゆっくりにして、掘り下げて行ってください。
最後にM6用のタップのNo.2で、同じ要領で削り取って、治具のベース部分の加工は完了です。
治具の連結部の製作手順
ここからは、上記で作成した治具のベース部分の上に乗せ、ほぞの大きさに応じてほぞ穴治具を一定の範囲を可動出来るようにするための連結部の製作手順です。
連結部で使用する 5.5mm x 155mm x 170mm の大きさの合板に、設計図に示した墨線を全て引いて下さい。
この治具がほぞの大きさに応じて動くようにボルトの軸がぶつからないようにするための溝をトリマーで掘っておきます。
トリマーに付けるビットは、同じスパイラルアップカットビットです。
この溝も貫通させるので、ビットの突き出し量は、連結部分の板厚と同じ5.5mmです。
治具のベース部分を切り取った時と同じなので、突き出し量はそのままで結構です。
溝を貫通させて行くので、下の作業台を傷つけないここと、バリの防止のために敷板を下に敷いてください。
設計図上の合板の4辺の端から65mmの位置に引いた墨線上に、トリマーのガイドフェンスになる適当な端材を置き、治具、敷板と共にクランプで固定します。
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この端から65mmの位置にトリマーガイドを置くことで、トリマーのベースプレートの幅90mmの半分の45mmの位置に溝が掘られて行きます。
設計図で溝に交差する8本の水色の線は、トリマーが切断する溝の開始する地点と終点の地点を表しています。
溝の開始位置に少し前方にトリマーを斜めにして、チルトインをして加工を開始します。
チルトイン加工でトリマーで溝の途中から開始しするやり方や、途中で終えるやり方は、別の記事「トリマーで加工する溝加工の2種類」に詳しく説明しています。
まだ読んでいない方は、そちらの記事も参考にしてください。
トリマーを斜めにして、左のガイドフェンスにぴったりと沿う動きを何度か上げ下げして確かめ、トリマーのトリガーを入れて始動します。
この動きを確認しないままトリマーをいきなり下ろすと、ガイドフェンスにぶつかったり、開始位置が右にずれてしまう恐れがあります。
トリマーの回転が安定したら、ガイドフェンスにトリマーのベースが沿っていることを確かめながら、ゆっくりとトリマーを下げて行きます。
トリマーのベースプレートが合板の上にぴったり乗ったことを確認し、ゆっくりと前進させ、トリマーの開口部を覗き込みながら、ビットが終点位置まで来たら、トリガーを切ります。
その際、トリマーの回転が完全に止まるまでは、トリマーを終点位置から動かさずに止めたままにしておいて下さい。
ビットが回転したままトリマー本体を動かすと、ビットが何かに触れた場合に非常に危険です。
【トリマーのチルトイン加工が完了した状態】
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上記と同じ手順で、合計4ヶ所に溝を掘って行きます。
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合板に引いた墨線の連結部として使う、L字型の2ヶ所を切り取って行きます。
【連結部の切り取りが完成した状態】
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このような、途中から始まり、途中から終わるトリマーの加工は、加工のスタート地点と終了地点を見極めるのは非常に難しい加工だと思います。
その精度を上げるためのストッパー治具を作ってみました。
この治具でトリマーの溝の開始地点と終点の精度が格段にアップ出来ます。
そちらの記事も参考にしてみて下さい。
切り取る際に進入して行く場所は、L字型の双方の墨線の隙間に2mmの隙間があるので、そこから切断を開始してください。
ジグソーで直線を切る場合、別の記事「ジグソーの使い方」の中で、ジグソーで墨線を正確に切断するためのコツと木工の初心者でも真っ直ぐな直線を切断出来るジグソー用治具を紹介しています。
そちらの記事も参考にして頂けたらと思います。
私の場合は、直角に切断する箇所にドリルで穴を開けた上で治具で切断して行きました。
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ジグソーをお持ちでない方は、直角に切断する近くにドリルで穴を開け、のこぎりを縦にして少しづつ切断して行っても結構です。
切り離しが終わったら、溝や切断面に出ているバリをサンドペーパーの#80〜#120で取り除いてください。
M6ボルトをボルトノブに入れ、ノブの中央にカバーをかぶせます。
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ボルトの軸に平ワッシャを入れ、治具のベース部分を四角に囲むように置き、その上に連結部を合わせて行きます。
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ベース部分の長い主フェンス側には、端から55mmの位置と80mmの2つのネジ山が刻み込まれています。
2つのネジ山あるのは、ほぞの大きさに応じて変更出来るように拡張用のネジ山を用意してあるためです。
通常のほぞの大きさなら、80mmの位置で大丈夫ですが、ほぞの大きさが大きい場合には、ボルトのねじ込む位置を55mmの位置に変更して下さい。
ネジの位置を変えることで、ほぞの長さが長いものにも対応出来ます。
【80㎜の位置で固定した状態】
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これで、ほぞ穴加工治具は完成しました。
次は、別の記事で紹介したオス側のほぞにぴったりのほぞ穴を、どうやってこの治具で加工していくのかを説明して行きます。
ほぞ穴治具の使い方
この治具は、ほぞ穴を貫通させる「通しほぞ穴」にも対応出来ますが、一般的な板材の途中までほぞ穴が掘り込まれている加工を例に説明して行きます。
また、いきなり治具を使って本番の加工作業をすると、上手くいかない場合が多いと思います。
別の記事の「ほぞ加工治具」と、この「ほぞ穴加工治具」の1セットのほぞ加工治具完成したら、端材で何回か練習をしてから、本番の加工に取り組んでみてください。
ほぞをはめ込むほぞ穴の位置に墨線を引きます。
ただ、このほぞ穴治具の仕組みから、墨線はほぞ側の4辺の寸法の全て木口面に引く必要はありません。
交差する角の直角の2本の墨線を引くだけで結構です。
そこにほぞを現物合わせで写し取った大きさの空間(ほぞ穴の大きさ)が開いた治具の角を合わせれば、他の寸法は自動的に決まるからです。
もう1つの大切なポイントは、加工後のほぞ穴が、板材の木口面に対して並行に空いていることです。
斜めにほぞ穴が開いている場合、治具が傾いてセッティングされたことが原因です。
それ避けるためのほぞ穴の墨線の引き方を説明します。
まず、ほぞの幅が来る位置に、差し金で木口面と直角になる墨線を引いて下さい。
この墨線が基準線になり、ほぞの幅が来る位置に墨線が斜めになってしまうことが防げます。
その墨線を基準に、ほぞの長さが来る位置にしるしを付けます。
スケールにストッパーがあるものを使うと便利です。
【ストッパー付きスケール】
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その後、そこから100mmほど離れた箇所にも同じ寸法のほぞの長さが来る位置の延長線上にもしるしを付けます。
最後にその2つのしるしを結ぶ墨線を引きます。
この墨線を引いたことで、板材の上に治具を置いても、墨線がほぞ穴の延長線上が分かり、治具が傾いてしまうことを防いでくれます。
これで板材の表面に片側だけ長く、直角に引かれた墨線が引かれたことで、墨線は完了です。
治具を作業台の平らな面に置き、治具のほぞを挟む空間になる中央の部分は少し広げておきます。
そこにほぞを当て、まずほぞの長さの面を治具の大きさを調整し、ぴったりと挟み込み、ボルトノブを締めます。
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この時には、まだ短い方のほぞの幅側は、空間が出来ています。
次にほぞの短い幅の側に治具をぴったりと挟み込み、ボルトノブを締めて下さい。
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これで、ほぞの大きさが治具に写し取られました。
ゆっくりとほぞを抜いて下さい。
この時の引き抜く感触が、加工が終わってほぞを差し込む時の感触になります。
きつ過ぎたり、ゆる過ぎた場合には、再度ボルトノブをゆるめ、治具の調整をやり直してください。
特に、ほぞ面と治具の空間に隙間があると、加工後の修正は出来なません。
治具の空間の四隅が、適度な感触でほぞ面が治具に挟み込まれていることを何度か抜き差しして、この段階で確認しておいて下さい。
ほぞが適度な感触で抜き差しできるようになったら、板材の上に治具を乗せ、治具が写した取って開いた中央の空間を墨線に引かれた直角の箇所に合わせて行きます。
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その後、長めに引いた墨線と治具の主フェンスのベースプレート(切断面)が一致するように治具の向きを調整します。
このことで、治具の傾きが防げます。
このセッティングをきちんとしないと、加工後にほぞ穴が傾いた修正は不可能になるので、慎重に進めて下さい。
墨線と治具が一致したこの位置で治具と加工する板材をクランプで固定します。
加工する面の幅が狭い時には不安定になるので、クランプが加工する板材の中央を押さえるようにして下さい。
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ほぞ穴の全てをトリマーだけで加工すると、ビットの負担が大きくなります。
トリマーのビットの負担を少なくするため、電動ドライバーで事前に数カ所にほぞ穴の深さと同じ深さの穴を開けておきます。
ビットの太さは、ほぞの幅の半分程度のものにして下さい。
ビットが治具の穴にギリギリな太さだと、治具のベースプレートを誤って削ってしまう恐れがあります。
穴の深さは、1mm程度の誤差あっても問題ありません。
垂直性もそれほど高い精度は不要です。
最終的にはトリマーで加工するので、トリマーが誤差を修正してくれます、
ただ、極端な深さの誤差を防ぐために、ドリルビットにドリルストッパーを取り付け、ノギスでビットが掘り込む深さを確認した上で固定してください。
<クリックで拡大>
今回の例では、ほぞの長さが20mmなので、ストッパーの位置を20mmにしています。
【ドリルの穴が開いた状態】
<クリックで拡大>
穴の数は多いほどビットの負担は少なくなりますが、あまり無理をしないで結構です。
今回はほぞの幅が15mmなので、8mmのビットで2ヶ所開けました。
治具への接触を避けるために、1回り細い6mmのビットでも問題ありません。
トリマーに、スパイラルアップカットのビットを取り付けます。
ビットの突き出し量は、15mmより、気持ち多めにします。
これは、ほぞ穴の深さがほぞの長さより少しでも浅い場合、ほぞの胴付き面に隙間が出来てしまうからです。
仮にほぞが押し込まれた状態で、ほぞ穴の内部に僅かにほぞ先に隙間が出来てしまっても、そこにボンドが流れ込み、接着強度を上げる効果があります。
ビットが接触していないことを確認し、トリガーのスイッチを入れます。
ビットのセッティングが出来たら、トリマーのベースプレートを治具のベースプレートの上に置きます
トリマーをチルトイン加工する時と同じように、ベースプレートが、斜めの位置からビットが穴に挿入され、水平に着地する位置を何度か試して見つけます。
トリマーが板材に接触していないことを確認し、トリマーのスイッチを入れます。
トリマーの回転が一定の速度になったら、ゆっくりとトリマーを穴の中に入れ、トリマーを治具に水平に着地させます。
ゆっくりとトリマーを左に移動して加工を開始し、左側のガイドフェンスに当たったら、そこからガイドフェンスに沿わせ、治具の中をゆっくりと時計回りに移動させて行きます。
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削り残しがないように、何回かトリマーを治具のガイドフェンスに沿わせて動かし、またガイドフェンスから離して中央の部分も何回か前後に動かして下さい。
トリマーの作業音で、何処を動かしても、トリガーのスイッチを入れた時と同じ作業音になれば、削り残しはありません。
トリマーはそのまま停止したままで、トリマーのスイッチを切って下さい。
トリマーのビットの回転が完全に止まったらトリマーを動かし、治具を外してほぞ穴が墨線通りに加工が終了したか確かめて下さい。
ほぞ穴が斜めになっていた場合は、治具が傾いてセッティングされていたことになります。
この場合は、修正が不可能です。
トリマーの加工が終わった直後のほぞ穴の四隅は、ビットの半径で描くR状になっています。
このままだとほぞ側の四隅は直角なので、ほぞとほぞ穴は結合出来ないため、修正が必要です。
修正方法は、下記の2つになります。
1.ほぞ穴の四隅を直角に修正する
2・ほぞ側の角面をほぞ穴に合わせて曲面に修正する
どちらの方法で修正をしても構いませんが、難易度が低いのは1の方法です。
理由は、ほぞの肩に段差があることと、ヤスリ等でほぞの幅や直線性を保ったまま加工することが難しいからです。
1の方法では、ほぞ穴の四隅が直角になっていれば、その奥のほぞ穴の断面が多少平面になっていなくても、ほぞは収まってくれます。
ほぞ穴の四隅を直角にするための墨線を引きます。
<クリックで拡大>
墨線の合わせて、ノミを押し込んで行きます。
この場合、男性の場合は手で強く押し込めば、角の位置でそのまま奥まで欠き取れて行きます。
一度に加工するのではなく、最初は角の面が直角になることを意識し、何度かノミを平面にして押し込み、少しづつ削り取って加工を進めてください。
女性の方やほぞ穴の深さが深い場合には、同じ要領で玄能でノミを軽く叩きながら少しづつ加工を進めてください。
切り口の状態は、ほぞが入ると見えなくなるのでそれほど神経質に仕上げなくて大丈夫です。
【四隅の修正が完了した状態】
<クリックで拡大>
出来上がっているほぞを、加工が終わったほぞ穴に差し込んで状態を確認します。
<クリックで拡大>
ほぞを画像のように、少し斜めにしながら押し込むと入りやすくなります。
ほぞが適度な「きつさ」で入り、ほぞの胴付き部分が、ほぞ穴の木口面に隙間なく最後まで入っていることを確認して下さい。
きつい場合に、無理に当て木をしてゴムハンマーや玄能で叩き込むと、ほぞが割れてしまう場合があります。
手で押し込んで、きつくもなく緩くもない状態になることを目指して下さい。
原因は、どちらかの加工時の治具のセッティングの不備か、削り残しがあった可能性があります。
治具のセッティングの再現は、ほぞ穴よりほぞの方が楽なので、ほぞを再度治具にセッティングをして下さい。
治具と板材のセッティングが終わったら、トリマービットを軽くほぞ面にゆっくり下ろすと、ほんの僅かにビットがほぞ面に食い込みます。
この時、強くビットをほぞ面に落とすと、それだけ削る量が増え、最悪削り過ぎてしまう場合があります。
削り過ぎると、その加工の修正は不可能です。
落とす衝撃で、ビットにも負荷を掛けます。
くれぐれも、ビットは軽く落として下さい。
その状態でトリマーの突き出し量を決めてを再加工すると、コンマ数ミリほぞ面を削り取ることが出来ます。
そのビットの突き出し量でほぞの4面を加工し、再度ほぞとほぞ穴の状態を確認して適度な「きつさ」でほぞの胴付き部分がほぞ穴の木口面に隙間なく入り込むまで修正してください。
原因は、ほぞの長さが墨線か加工時のどちらかに誤差があったためか、ほぞ穴の深さが浅かったことが考えられます。
ほぞの長さが長過ぎているということは、ほぞの開始位置が間違っている可能性があります。
同時にそれは、ほぞ加工をしていない板材の端までの長さが、短くなっているはずです。
もし、そうであれば、その作品の全体のサイズが異なってしまうので、その影響を検討する必要があります。
全体のサイズが小さくなることに影響が少ない場合には、この治具の仕組みから考えて、ほぞ加工をする全ての板材へのサイズの修正と墨線の修正をする必要が出て来ます。
ほぞの開始位置を間違ってまだ、1本だけの加工しかしていない場合には、再度ほぞの加工をやり直すことをお勧めします。
もう1つは、ほぞの強度に影響する面があります。
ほぞの胴付き面ととほぞ穴側の木口面をぴったりと合わせるには、ほぞの長さを短く切断するか、ほぞ穴を深くする必要があります。
難易度が低いのは、ほぞの長さを短く切断することです。
ただ、ほぞの長さが短くなると、強度がその分、弱くなります。
もし、その隙間が1mm未満のものなら、ほぞの長さを修正する方法でカバーしてもほぞの強度に与える影響は少ないでしょう。
ほぞ穴を修正する場合、治具が少しでもずれると、ほぞ穴が大きくなってしまう可能性があります。
大きくなったほぞ穴を修正することは不可能なので、ほぞ穴の修正は避けた方がいいでしょう。
以上のサイズの問題、修正の難易度、強度に与える影響等、総合的に修正方法を検討してみてください。
ほぞとほぞ穴の抜き差しが適度な状態であること、双方の板材に隙間のないことが確認出来たら、ほぞとほぞ穴にボンドを塗り、固定して行きます。
その際の留意点は、下記2点です。
1.ほぞ側の板材とほぞ穴のある板材の接着面に隙間がないこと
2.双方の板材が直角であること(要ノギスで確認)
この2点を確認後、ボンドが乾くまでクランプで固定して2〜3時間は放置します。
今までの他のボンドの接着時と同様に、クランプで止める前と止めた後の2回、はみ出しボンドがないか、、はみ出しているボンドがあれば、速やかに濡れたウエスで拭き取って下さい。
まとめ
今回のほぞ穴治具で、2回に分けて紹介したほぞ加工は終了です。
このサイトで紹介した自作治具の中では、一番作るのにも手間が掛かり、実際の加工も何回か練習をしないとうまくいかないかもしれません。
ほぞ穴の連結部の板取図は、少し複雑で解りにくかったかもしれません。
このほぞ用の治具の原理は、墨線上にベースプレートを合わせ、ガイドフェンスに沿わせてトリマーを動かす一番基本のトリマー治具と大入れ継ぎ治具と同じものです。
トリマーの作りは、いたってシンプルです。
電動ドライーに似て、回転するモーター軸がビットを取り付けただけで、使用出来ます。
ただ、電動ソライバーが回転するビット押し込むだけの加工しか出来ないことに対し、トリマーは上下左右にビットを動かすことで、多彩な加工が出来る工具です。
2回にわたって紹介したほぞ加工は、それを物語っています。
皆さんが、この記事を参考にほぞ加工治具を自作し、木工初心者の域を抜け出し、さらに強度が高く、見栄えもプロ並みの作品が出来るようになることを願っています。
以上