自作トリマー用治具の用途
トリマーの加工で、最も使用頻度の高いビットがストレートビットです。
ただ、どんなトリマーを買っても附属として6mmのストレートビットが付いて来ます。
ただ、トリマーに最初から付属しているストレートビットは、お世辞にも切れ味がいいとは言えません。
切れ味が悪いビットを使用すると、加工中の騒音も増すことになります。
出来るだけ、切れ味のいい6mmのストレートビットを購入することをお勧めします。
切断面に正確に直角に掘り進み、加工後の底面は綺麗な平面になります。
用途は溝堀り、段かき、蝶番の座ぐり、ほぞ加工等の広い用途で使用します。
ただ、トリマーを加工する部材にフリーハンドで動かして行くと、刃先はどんどん左側に曲線を描いてしまいます。
トリマーを様々な用途で使うためには、まずトリマーの刃先が墨線で書かれた直線上を正確に動いて行くことが必要です。
このため、トリマーが墨線の上を真っすぐ動くようにするには、何らかの治具がないと不可能な工具だと言えます。
この記事で紹介する自作のトリマーガイドを使うことで、木工DIY初心者でも、トリマーで墨線上を真っすぐに加工出来るようになります。
そのことでネジを使わない木組みや溝加工が出来るようになり、木工DIYの初心者の加工を大きくレベルアップすることが出来ます。
同じ用途の治具としは、別の記事「丸ノコ治具の自作」を紹介しています。
このような自作の簡単な治具を作ることで、木工初心者でも精度の高い加工作業が出来るようになります。
トリマーに付属している平行ガイドの限界
多くのトリマーには、本体と一緒に、端のエッジに沿わせて直線を加工する時に便利な治具が付属しています。
ただ、下記の点で使い勝手はあまりいいものではありません。
・トリマーを安定させて動かすため、治具に板材を取る付ける必要がある
・取り付けた板材がきちんと平面であることが必要
・部材の端からの距離をその都度トリマーの刃と取り付けた板材の距離を測る必要がある。(しかもその距離を正確に測ることは難しい)
・付属の治具が開く幅には限界があり、その距離を超えた加工は出来ない。
・治具を当てる板材の端から平行ではない方向への加工は不可能
自作のトリマー治具は、上記のような制約がない、使い勝手のいいものです。
自作トリマー用治具の特徴
このトリマー用治具は、丸ノコ治具と同様、中央のガイドフェンスに沿って、トリマーを前進させ右端を切断して作ります。
治具が完成すれば、トリマーをガイドフェンスに沿わせて動かせば、トリマーの刃は、必ず切断した治具の右端をいつも通ることになります。
したがって、治具を墨線に合わせてガイドフェンスの沿ってトリマーを動かせば、絶えず墨線から右側にビットの直径の幅の溝が彫られて行く仕組みです。
トリマーに付属されている平行ガイドのように、トリマーの刃までの距離をその都度測る必要はなくなります。
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自作丸ノコ治具は、片手で治具を押さえれば、治具が動くことはありません。
それに対して、トリマーの刃は、丸ノコよりもはるかに高速で回転しているため、治具を手で押さえても動いてしまいます。
加工する板材の長さが200mmまでなら1台、それ以上の長さでは2箇所以上をクランプでしっかりと固定する必要があります。
尚、治具の板厚は治具がしならない強度が必要なので、丸ノコ治具と同様に板厚5.5mmのシナ合板(他の合板でも可)を使うことをお勧めします。
トリマー付属の平行ガイドとは違い、この治具は部材のどの位置でも加工は可能です。
ただ、この治具は丸ノコ治具と同様、加工する部材が平面で安定していないと正確な加工が出来ません。
治具を部材の上に乗せると傾いてしまう場合には、同じ板厚の部材を治具の下に敷き、治具を安定させる必要があります。
【治具が傾く段差を同じ板厚の端材で補完(画像は丸ノコ治具】
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四角ではない変形の部材や円形や曲線を描く部材でも、墨線の直線に沿って加工ができます。
治具の製作は、ガイドフェンスに沿わせてトリマーで治具の右端を切断して作成します。
丸ノコ治具と同様の作り方なので、一度治具を作れば、墨線に治具の右端を合わせれば、いつも正確な加工が出来ます。
ただ、丸ノコのと違って、トリマーは頻繁にビットを交換して加工します。
治具を作る時に切断されたオフセットの距離(中央のガイドフェンスからビットの刃先までの距離)は、治具を作ったビットの直径の専用のものになります。
トリマーに取り付けるビットの直径が大きいほど、ガイドフェンスからビットまでの距離は短くなります。
ストレートビットの直径は、細いものから太いものまで多くのサイズがありますが、使用頻度の高いものは、下記のサイズです。
ストレートビットの直径:3mm , 6mm , 8mm , 10mm
今回は、使用頻度の高いビット径である6mm と 8mm 用の2種類のビットを1つの治具で使えるものを製作して行きます。
これで多くのビットに対応出来る治具が、少ない枚数で作成出来ます。
今回は、私の使用頻度が高い6mmと8mmのものを作って行きますが、1つの治具に、どの直径のビットを組み合わせたものを作った方がいいという決まりはありません。
治具を使い込んで行くと、「もっと小さな径のものを良く使う」とか、「もっと治具の全長は長いものが必要だ」と感じることもあるでしょう。
ご自分で使う頻度の高いビットと使い勝手のいい長さのものを徐々に増やしていって下さい。
治具の作り方の基本は、全て同じです。
私の場合、一番使う頻度が高い6mm、8mm、10mm用の治具は、短いものや1mの長さのもの等、使用頻度に応じて色々作ってあります。
丸ノコ治具と同様、中央のガイドフェンスは、治具の底面よりも長くしてあります。
そうすることで、加工のスタートから完了までのトリマーのベースプレートが安定させて動かせて行けます。
丸ノコ治具と同様、墨線の確認用に半円形の窓があるので、墨線と治具の右端がぴったり合っているか、確認が出来ます。
一度に加工する深さは、3mmまでにする
別の記事の「電動工具」の中のトリマーを操作する時の留意点で説明しましたが、ストレートビットの場合、一度に切断出来る量は2mm〜3mm 程度です。
特にトリマーに標準で付属している直径6mmの太さのストレートビッドは、8mm、10mmのビットに比べ、切れ味が悪く、作業音も大きくなります。
丸ノコは、どんな板厚でも一回の加工で切断が終了しますが、、トリマーは目的の深さに加工するまで、ビットの突き出し量を2mm 〜 3mm づつ徐々に増やしながら、何回かに加工を分ける必要があります。
一度に5mmの深さをトリマーで加工することは、不可能ではありませんが、ビットが部材を削る抵抗感は大きく、作業音も大きく、刃にもモーターにも負担を掛けていることが分かります。
面倒でも、一度の加工のトリマーの刃の突き出し量は3mm前後にするようにして下さい。
自作トリマー用治具の設計図
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治具の製作に必要な工具と部材
必要な工具
・トリマー
・電動ドライバー
・丸ノコ(のこぎりとソーガイド)(各部材の切断用)
・ファスナービット(直径25mm)・皿取りビット
・センターポンチ
・長さ10mm〜12mm用木ネジ 4〜5本(裏のガイドフェンスから付き出ない長さであること)
必要な部材
・ シナベニヤ(合板):厚さ5.5mm x 550mm x 170mm(治具底板)
・角材:厚さ15mm x 650mm x 40mm(ガイドフェンス)
・ベニヤ合板:厚さ3mm 30mm X 550mm(トリマーの敷板”枕”)
板厚は、治具が反らずに平面を保つために、最低でも5.5mmの部材をお勧めします。
自作トリマー治具の製作手順
*丸ノコをお持ちでない方は、ホームセンターのカットサービスを使うか、ソーガイドを使ってのこぎりで切断しても構いません。
・正確な墨線の引き方は、別の記事「手工具」の中のスケ―ルを使った正確な墨線の引き方を参照下さい。
・のこぎりの正確性を高めるソーガイドについては、別の記事「電動工具と手工具の特徴」の中の治具を使えば正確な切断が可能と「のこぎりの使い方のコツ」を参考にしてみて下さい。
・自作の丸ノコ治具の作り方は、下記の関連記事を参照下さい。
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・底板を裏返し、最初に中央のガイドフェンスに裏側からネジ止をするための墨線を引く。
・ネジを止める箇所にはセンターポンチで目印を付けて行く(ネジ止めは4〜5ヶ所程度)
・治具の底面は、ネジの頭が干渉しないで平面を保つ必要がある
そのため、センターポンチで穴開けたした箇所に、皿取りビッドで座ぐりをしてネジの頭が底板よりの下に落とし込まれるようにする
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刃の交換時は、必ずトリマーの電源ケーブルがコンセントから抜けていることを確認して下さい。
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*トリマーのビッドの取り付け方と外し方は、別の記事「電動工具」中のトリマービットの取り付け手順を参照のこと
これからトリマーでトリマーガイドの右端を切り離して行くための、切り離すのに必要なビットの突き出し量は、治具の板厚の5.5mmです。
ただ、この突き出し量は、一度に加工出来るトリマーの突き出し量3mmをオーバーしてしまいます。
ビットの突き出し量を3mmにして1回目の加工を開始します。
トリマーのベースプレートをガイドフェンスに沿わせながら、トリマーのベースプレートが傾かないように、トリマーの下部を包みながら持ち、トリマーをゆっくりと前進させて1回目の切断を開始します。
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*切断された跡を見ると、治具の底板を全て切断していないことが分かります。
2回目の加工はビットの突き出し量を5.5mmに変更します。
この場合、もし、突き出し量が不足していた場合、もう一度再加工する必要が出て来てしまいます。
そこでビットの突き出し量を決めるのに、現物合わせで行ないます。
トリマーのベースプレートにトリマーを置き、ビットの先端が下の敷板に接地した位置でビットの突き出し量を固定します。
これで、確実にトリマービットはガイドの底板を切り取ることが出来ます。
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*2回目の加工の跡は、残りの切断箇所が全て切り離されているのか、確認する
必ず、トリマーの電源ケーブルをコンセントから抜いて下さい。
直径6mmのストレートビットを外し、直径8mmのストレートビットに付け替える
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この「製作手順」の10〜14ま での手順と同様に、1回目はビットの突き出し量を3mmにして加工し、2回目はビットの先端が敷板に付く箇所でビットの突き出し量を変え、2回の加工を経て8mm用の治具用の切断をして行きます。
【2回目の加工跡】
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6mm用と8mm用を間違わないように、治具上にマジックでmm数を表示をしておく
治具の裏側には、滑り止めとして#120程度のサンドペーパーをボンドで貼っておきます。
これは、加工する板材と上に乗ったトリマーガイドのずれを防止するための滑り止めのためです。
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【完成した治具】
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まとめ
トリマーは、多様な加工が出来る電動工具ですが、面取りの加工以外の加工では、トリマーを制御するガイドが必要です。
今回のストレートビット用のガイドがあることで、トリマーの持つ機能をさらに発揮することが出来ます。
この治具が完成したことで、この治具をさらに便利にする「分割加工治具」を別の記事で紹介しています。
単なる合板を治具の上に置くだけで、トリマー固有の面倒なビットの突き出し量を何度も変える手間を省いてくれるすぐれものです。
さらに、この治具は横に置くことで、板厚に応じたビットの溝の幅も変えることも出来ます。
例えば、6mmのストレートビットが止められているトリマーの横に2mm厚の枕を縦にしてガイドフェンスに置いて1回目の加工をします。
そして2回目は枕を外して、加工をすると、8mm幅の溝が出来ます。
面倒な治具を作らなくても、溝の深さと幅も効率よくトリマーを使えるこの治具も是非、活用してみて下さい。
以上