木工初心者でも難易度の高い45度の切断を可能にする治具
木工DIYの中で、額縁の製作はとても人気の高いものです。

よし!正確に45度に切断すれば、できるはず!
そう思って、挑戦した方なら分かると思いますが、どうしても45度に切断した四隅の上部か下部に隙間が出来ていませんか?

おかしいな・・ちゃんと45度に切断したのに・・
私も、趣味で木工を始めた頃に額縁を作って、そう簡単に行かないことを思い知りました。
45度の切断誤差は、1ヶ所に誤差があると4ヶ所の誤差が累積してしまいます。
角度の誤差は、額縁の幅が広くなればなるほど、頂点から2つに分かれた距離が広がり、隙間が大きくなって行きます。
この記事では、そんな額縁の製作に何度も失敗して半ば諦めていた私のような方に向けて、隙間のない正確な額縁が出来る「45度の切断治具」の作り方をお伝えします。
この治具を使うことで、木工の初心者でも、隙間のない額縁の製作が出来るようになります。
一般的な額縁というと、それほど厚みもなく幅も広いものではないため、丸のこではなくてものこぎりで充分に切断可能なので、のこぎりを使用して切断する治具にしました。
この45度の正確な切断が出来ると、額縁だけではなく、その応用としてチェスト等の家具を作る時に、上部や下部の四隅にモールディング(装飾を施した一定の長さの木片)を45度に切断して取り付けることが出来るようになります。
そんなモールディングを45度に組み上げただけで、作品の雰囲気が一変にゴージャスになります。
下記は、私の自宅にある家具ですが、皆さんの家の中を見渡すと、隅が直角で45度に切断されたモールディングされたものが家具や壁にあるのではないでしょうか?
【家具の下部に45度に切断したモールディングを施した例】
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是非、この記事を参考にして正確な45度の切断方法をこの治具で実現し、額縁だけではなく、家具作りにも応用し、ご自身の木工の加工の幅を大きく広げていって下さい。
自作45度切断治具で切断した結果
最初にこの治具を使って45度に切断すると、実際の精度はどの程度になるのかをお見せしておきます。
【治具を使って今回切断した45度の切断結果】
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このように、この治具を使えば、四隅の何処にも隙間なく加工が出来ることが、お解り頂けると思います。
【参考】
45度に切断した部材をボンドで接着して行くには、普通のクランプで締め付けると、45度の傾斜部分がずれてしまい、固定出来ません。
画像のように切断面の四辺を覆い、簡単に締め付ける強さを増して行けるベルトクランプは、手元に必ず用意しておいて下さい。
45度切断治具の特徴
隣り合う部材の合計の角度が90度になる
30年前の私が、額縁を作る時に目指していた切断は、正確な精度で4つの額縁の部材を45度に切断することでした。
そこでは、切断した部材のどれとどれを接着するのかを、ほとんど意識していませんでした。
この治具の仕組みは、「切断された隣り合う部材が、合計して90度に切断されている」という考え方の治具です。
極端に言えば、「片側が44度であっても、隣り合う部材が46度で切断されていれば、合計で90度になるため隙間は出来ない」という考え方です。
以前の私のやり方は、4つの部材全てが45度になる事を目指していましたが、この治具は、隣り合う2箇所の部材が90度になっていればいい訳です。
この考え方を従来の私のやり方と比較すると、下記の図になります。
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切断回数が半分で済む
上図のように、従来のやり方では合計8回の切断が必要でしたが、この治具では4回で済みます。
また、留意する角度は、木工で最もなじみのある90度(直角)です。
隣り合う部材を重ねて切断
では、上記のように、切断する基準を45度から90度に変えるとは、具体的にはどうすればいいでしょうか?
この治具の切断方法は、正確に90度に作られた治具のフェンスに、隣り合う部材をしっかりと固定し、2本重ねて1回で切断する方法を採用しています。
そのため、どの部材とどの部材を一緒に切断したかがとても重要になります。
そのため、切断前にどの部材とどの部材をワンセットにして切断したかが分かるよう、4本の部材の中央と両端に番号や記号を振っておいてください。
詳細はこの記事の中の「45度切断治具の使い方」で具体例をお話しします。
また、切断が進んで行くと、どちらが内側になるかが混乱してくるため、内側か外側にも印を付けておいて下さい。
45度切断治具の設計図
【45度切断治具の設計図】
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設計図だけだとイメージが沸かないと思うので、この治具の完成品の画像を見ながら、説明していきましょう。
45度切断治具を構成する2つのパーツ
この治具は、2つの部分から出来ています。
1つは切断する部材をフェンスに固定する基盤部分と、もう1つは、のこぎりの切断をガイドするのこぎりガイドフェンスの2つです。
のこぎりのガイドフェンス部分は、加工する部材の板厚に応じてダボで上下に動く仕組みになっています。
基盤となる治具全体の大きさは、220mmとしていますが、ご自分が作ろうとする額縁の大きさから決めて頂いて結構です。
基盤部分の大きさは、作ろうとする額縁の長い方の部材の半分ほどの長さがあれば十分です。
治具は、基盤になる220mm x 220mmの部材の4隅の何処か1ヶ所に正確な90度(直角)の頂点を丸ノコかのこぎりで正確に切り出してあります。
90度に正確に切り出された箇所は、設計図では基盤部分の左上の頂点になります。
この底辺の頂点の1ヶ所が「正確な90度」であることが、この治具の精度を決める心臓部になります。
【治具の基盤部分】
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直角に沿ったフェンスの上には、直径6mm 長さ30mm のダボが2本づつ、埋め込まれ、木工ボンドで固定されています。
このダボは、切断時にフェンスの上に乗せられる、もう1つのパーツであるのこぎりガイドを固定するためのものです。
この治具の原理は、他の記事の「丸ノコ治具の自作」や「トリマーガイドの自作」で紹介した治具と同じ原理の治具です。
治具の製作途中まで、のこぎりガイドの底辺部は100mm x 100mmの1枚の合板ですが、最終段階では左右にあるのこぎりのガイドフェンスにのこぎりを沿わせながら2枚に切り離して治具を完成させて行きます。
治具の完成後、のこぎりが左右にブレないように固定され両側のガイドフェンスに沿わせて動かすことで、のこぎりは、治具を作った最終段階と同じ軌跡を描いて下にある部材を切断して行きます。
同時にのこぎりのガイドフェンスは、フェンスから上に出ている直径6mmのダボで固定されているため、切断する時の角度のブレが出ません。
【完成したのこぎりガイドフェンス部】
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切り出されて2つになったガイドフェンスは、基盤の上に出ている6mmのダボに差し込み、治具が部材を45度に切断出来る状態になります。
【治具の完成状態】
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この状態が、設計図の平面図になります。
基盤部のフェンスの高さの決め方
私の設計では、ダボは直径6mmで長さ30mmのもので、半分はフェンスに埋め込まれ、半分は上に突き出ています。
ダボの直径は、強度を高めるために8mmにしても構いません。
ただ、ダボの長さはある程度の板厚に対応出来るように、最低でも30mmの長さのものを使用して下さい。
そして90度に切り出した底辺の両側沿って設置されたフェンスの高さは、50mmにしてあります。
このフェンスの高さをどの程度にしたらいいかは、下記の式で求められます。
フェンスの高さを求める式
(治具の基盤部の底面の板厚)+(使用したい最大の板厚) x 2 -(フェンスのダボの高さ)-(のこぎりガイドの底面の板厚)
私の場合、最大で良く使用する18mmの板厚の板材が切断出来ればいい、と考えました。
式に当てはめると
18mm(基盤部の板厚)+ 18mm(作品の板厚)x 2 - 15mm(フェンスのダボの高さ)- 5.5mm(のこぎりガイドの板厚)=44.5mm → 50mm(設計図のフェンスの高さ)
上記を参考に、ご自分額縁を作る時に使用したい板材の板厚を考慮して、基盤部のフェンスの高さを決めて下さい。
45度切断治具の作り方
必要な工具類
・丸ノコ(のこぎり)・・・部材の切り出し用
・のこぎり・・治具完成後に45度の切断で使用
・ソーガイド(部材の切り出しにのこぎりを使用する場合)
・電動ドライバー(フェンスとのこぎりガイドの固定に使用)
・木工用6mm穴あけ用(8mm)のビット・・ダボの貫通穴開け用
・下穴あけ用:2mm〜3mmのビット
・電動ドリルスタンド(ダボの貫通穴あけ時に使用)
・差し金(スコヤ)(基盤部の直角の確認と墨線用)
・一発止型定規(墨線用)
・両面テープ (フェンス等の仮止め用 ボンドでも可)
・木工用ビス 長さ25mm〜30mm:6本(フェンス固定用)
長さ10mm〜15mm):6本 (のこぎりフェンス固定用)
・サンドペーパー :#80(治具の底面に滑り止めとして貼付)
・木工用ボンド(サンドペーパーとのこぎりのガイドフェンスの固定で使用)
必要な部材
治具の基盤部とフェンスの材質は全てMDF材を使用しています。
これは、安価なことと長く使っても反りが発生しないためです。
強度を持たせたいので、厚みは18mmを使用しています。
部材のサイズ
・基盤部分 MDF材:18mm x 220mm x 220mm 1枚
・フェンス部分 MDF材:18mm x 50mm x 220mm 2枚
・のこぎりガイド底板 :合板:5.5mm x 100mm x 100 mm 1枚
・のこぎりガイドフェンス部 端材のパイン材かMDF材:18mm x 30mm x 150mm 2枚
・直径6m(8mm)長さ30mmのダボ4本
治具の製作手順
この行程は、ホームセンターのカットサービスを利用することでも結構です。
自分で切り出す場合、18mm の MDF材を 220mm x220mm の大きさに丸ノコ、またはのこぎりで切り出します。
丸ノコの場合は、別の記事「丸ノコ治具の自作」で紹介した治具を使えば、墨線に正確な直線性と切断面の直角が確保された切断が出来ます。
丸ノコをお持ちでない方は、別の記事「のこぎりの使い方のコツ」で紹介したソーガイド―を使って、直進性と切断面の直角を確保して下さい。
ホームセンターのカットサービスを利用した場合、ほとんど問題ない精度だと思いが、確認はして下さい。
丸ノコでものこぎりで自分で切り出したとしても、治具を使って切断すればそれほど大きく狂っていることはないと思います。
何処か1ヶ所基準面を決めて、慎重に差し金かスコヤを当てて確認と必要に応じて修正をして下さい。
私は、いつも自分で部材を丸ノコで切り出しますが、2回ほど修正を繰り返しました。
この基盤部の1ヶ所が正確な直角であることが、この治具の最も重要です。
【直角の確認】
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直角が確認出来た頂点は、分からなくならないように目印を付けておいてください。
一応、基盤部の切断面の直角も確認しておいて下さい。
【基盤部の切断面の直角の確認】
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基盤部の切断面が直角になっていないと、フェンスを取り付けると傾いてしまいます。
フェンス部として切り出した2本の部材を正確な直角を確認出来ている印のある頂点に向けて取り付けます。
この後ネジ止めをする際、取り付けるフェンスが動かないよう、基盤部の底面の木端面に付け、フェンスが固定される位置がずれないように注意して押し付けます。
一発止型定規フェンスの上に乗せ、底面の中央部分からフェンスに延長した墨線を引いて行く。
【一発止型定規で墨線を引く】
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フェンスに引かれた墨線上に、3ヶ所のネジ止めをする位置に目印を付ける
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*私の手持ちのネジが25mmと少し短かったので、木工用8mm穴あけビットで数ミリ座ぐりをして、ネジが底面の奥まで押し込まれるようにしました。
30mm前後のネジの場合には、この加工は不要です。
下穴を開ける際には、次に使うネジ止め用のビットにワンタッチで装着・着脱が出来る、下穴用ビットが便利です。
【ワンタッチ下穴用ビット】
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【下穴開け】
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この後、ネジ止めをしてフェンスを固定していきます。
フェンスと底面は、両面テープで接着してあるので、安定した作業が可能です。
のこぎりガイドフェンスの直角を確認し、直角が確認出来た頂点からのこぎりが45度で切断して行く墨線を引きます。
【のこぎりガイドの底辺の直角の確認】
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【45度の墨線】
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この墨線は、この次の行程でのこぎりのガイドフェンスを取り付けて行く時の目安とするためのものです。
1.フェンス上部に両面テープを貼るか、クランプで交差する地点から、両側のフェンスに面一(ツライチ)にピッタリとのこぎりガイドの底部を合わせて固定します。
3.ダボの貫通穴になるフェンス中央の4ヶ所の位置に墨線を引いて行きます。
2.貫通穴を開ける位置に、センターポンチで印を付けます
【のこぎりガイドをフェンスに固定したまま、センターポンチを打つ】
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3.ドリルスタンドでセンターポンチの印に合わせ、のこぎりガイド底部の合板の上からフェンス上部まで、6mmの貫通穴を4カ所開けて行きます。
穴の深さは、ダボの長さの半分の15mmです。
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6.フェンスの上に固定していたのこぎりガイドを外します。両面テープで固定していた場合にはテープを剥がします。
【ダボの接着】
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フェンス上部に空いた6mmの穴とダボの下部に木工用ボンドを塗り、ダボを押し込んで3時間ほど放置します。
(はみ出したボンドは、すぐに濡れて絞ったウエスで拭き取って下さい)
【サンドペーパーの貼付】
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フェンスに接着したダボのボンドを乾かしている間に、治具の基盤上のフェンスの角に、適当な大きさに切った#80のサンドペーパーを木工用ボンドで、貼って下さい。
これは、切断する2本の部材が滑るのを防止するものです。
1.のこぎりのガイドフェンスになる18mm x 30mm x 150mm 2本部材の18mmの面2カ所に、木工用ボンドを貼付します。
2.事前に引いておいた45度の墨線の中央に沿わせて、2枚のガイドフェンスを仮置きします。
3.その中央にいつも使用するのこぎりを隙間なく挟み込み、左右にぶれずにのこぎりを上に引き抜くとスッと抜ける位置を探します。
(ボンドが乾く前なので、位置はまだ動きます)
4.適切な位置が決まったら、クランプで位置を決めたのこぎりガイド2本を固定します。
このフェンスの固定位置が、のこぎりが傾かずに直角に切断するフェンスの位置になります。
【のこぎりを挟み込んでガイドフェンスの位が決まった状態】
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のこぎりを抜き、3時間ほど放置してボンドが完全に乾いたら、裏側から10mm〜15mmほどの長さの木ネジでのこぎりガイドェンスを固定して行きます。
1.のこごりガイドを裏返し、のこぎりガイドフェンスの中央になるように、ネジ止めする箇所に墨線を引いて、ネジ止め箇所(片側3ヶ所)に印を付けて行く
【のこぎりガイドフェンスのネジ止め用墨線を引く】
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1.ネジの先端が突き出ない程度に、座ぐりビットで加工しておく
*座ぐりをしておかないと、ネジの頭がフェンスと干渉してしまうため
2.座ぐりした箇所にネジ止めをして行く
nbsp;
のこぎりのガイドフェンスに貫通した穴とフェンスの上に突き出たダボを差し込んでみて下さい。
恐らくガイドフェンスに開けた穴は、きついと思います。
#80程度のサンドペーパーを細い棒状のものに巻き付け、慎重に穴を少し広げて調整して下さい。
穴の大きさを削り過ぎると、ガイドがブカブカになってしまい、のこぎりの切断ガイドが動いてしまい、切断精度が落ちてしまいます。
何度か削りながら、穴の入り具合を確認しながら進めて下さい。
1)ダボとのこぎりガイドフェンスも完全に乾いて固定され、のこぎりガイドの穴にもダボが適度に入るようになったら、フェンスの上にのこぎりガイドを一番深く押し込み、フェンスの上に密着させて下さい。
2)フェンスにのこぎりを静かに差し込んで行き、ガイドに沿ってのこぎりを動かし、のこぎりガイドの底辺の合板を全て切断して行きます。
墨線は見えませんが、フェンス固定前引いてある45度の墨線の上をノコギリが切断しているイメージです。
【のこぎりガイドの底辺の切断】
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のこぎりは、ガイドの下にある左右のフェンスの角を全て切断してしまっても構いません。
終了の頃には、ガイドに沿った切断面が出来ていいるのでそのままのこぎりを基盤部に平行に動かしながら切断を進めて下さい。
切断音がサンドペーパーを切断すると音になったら切断を終了します。
のこぎりガイドフェンスの切断が完了すると、治具は完成です。
【切断されたガイドフェンス】
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45度切断治具の使い方
治具が完成しても、いきなり本番の木工作業をするのではなく、手持ちの端材で一度テストすることをお勧めします。
では、今回私がテストを兼ねて作成した額縁の手順を説明して行きます。
額縁に使用する板材
・18mm x 30mm x 200mmのパイン材 4本
この記事の中の「45度の切断治具の特徴」の中で「隣り合う部材を重ねて切断」して行く時に、部材に何らかの数字や記号を目印に付けておくことをお勧めしました。
私の場合、部材の中央に番号を振り、両端に、それがどの番号の部材と隣りあうのか、その部材の番号を振っています。
また、切断が進んで行くと、切断する向きが混乱して行くので、額の内側になる箇所には○印を書いておきました。
【切断前の各部材に振る目印のナンバーリングの例】
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画像のように、例えば「1」の部材は、隣り合う部材が、「2」と「4」
になるため、「1」の左右に②と④と隣り合う部材の番号を書いています。
その下の「2」の部材は上が「1」と重なるので①、下は「3」と重なるので③、と上下にその番号を書いています。
また、内側になる側には、部材に「〇」を記入しています。
(*4の部材だけ置く位置を180度違ったまま撮影してしまっていました。
御容赦下さい。)
まず、「1」と「2」の番号を振った部材を内側の印(〇)を中側に向け、両のフェンスにぴったりと沿わせてクランプで固定します。
【最初の切断をする部材の固定方法】
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部材の固定するポイントは、加工する「1」と「2」の部材は、フェンスと同時に治具の直角な基盤部の頂点にも密着させる必要があります。
下になった「1」の部材は見えませんが、右に伸びるフェンスと左のフェンス双方に密着しています。
上にした「2」の部材も同様に左右のフェンスに密着させます。
ここで、2枚の部材を重ねた状態で切断する、この治具特有の板厚の段差を考慮してセッティングする必要が出て来ます。
1つはこのまま2枚の部材を重ねると、上に重ねた部材は、下にした板の厚み分だけ浮き上がるので、切断しない部材のどちらか1本を、上にした部材の下に敷いて段差を無くしておく必要があります。
もう1つは、切断する板厚によって、下記2つのケースに分かれます。
1.重ねた部材がフェンスと同じか、その下になる場合
私の設計では、フェンスの高さが50mmなので、加工する板材の板厚が16mmの場合に左右のフェンスと同じ高さになります。
もし、15mm以下の板厚だった場合には、のこぎりガイドはフェンスの上に乗り、部材はその下に重なって固定されます。
段差解消で必要なことは、上になる部材の下に同じ板厚の他の部材を敷くだけです。
この場合、のこぎりのガイドフェンスは左右共に、フェンス上に乗って並行になるのでそのまま切断を開始します。
2.重ねた部材がフェンスの上に突き出る場合
今回の例では板厚18mmのパイン材部材なので、2枚重ねると左側のフェンスの部材だけが4mm上に突き出します。
この状態のままのこぎりガイドを差し込むと、左側ののこぎりガイドだけが部材の上に乗った状態になり、右側のののこぎりガイドだけがフェンスに乗り、右ののこぎりガイドだけ下がった状態になります。
この段差を解消するためには、切断しないもう1本の部材を右側の「1」の上に置くことで、その段差が解消します。
以上をまとめると、板厚に応じて2枚の部材を重ねてフェンスから突き出した場合には、上にした部材の下に部材を敷くと同時に、下になった部材の上にも段差解消のため、部材を置く必要があるということになります。
【段差が解消されている状態】
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【今回の切断前のセッティングが完了した状態】
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【切断の開始】
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のこぎりガイドは、現物で使用するのこぎりの刃の幅ぴったりに作っています。
ゆっくりとのこぎりを差し込み、左右に揺らしても隙間が無いことを確認して下さい。
切り始めは力を入れずに、のこぎりガイドのフェンスに沿って動かすイメージを持って下さい。
ソーガイドを使ったことがある方にとっては、同じ感覚です。
徐々に切断が進むと、部材に正確な切断面が作られ始めるので、力を入れてのこぎりを引いても大丈夫です。
のこぎりを並行に動かすままではなく、先端を下げる → 平行に動かす → 手前を下げるといった動きを連続で繰り返すと切断の速度が増します。
【のこぎりの先端を下げて切断】
【のこぎりを並行にして切断】
【のこぎりの手前を下げて切断】
のこぎりがさらに基盤部に移動し、切断音が一番下に敷いてあるサンドペーパーを削る音になったら切断完了です。
クランプを外し、2本の部材の加工面を確認して下さい。
特に下に置いた部材の最後が完全に切り落とされていないことが多いかと思います。
ただ、この切り落とされていない箇所の厚みは、数ミリのはずです。
既に治具からは外されていますが、既に切られた切断面がガイドになるので、残された箇所にのこぎりを入れて残った箇所の切断をゆっくりと進めます。
すぐに残った箇所の切断は完了します。
【切り残った部材の切断】
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次は、「3」と「4」と振られた部材をクランプで固定し、切断をして行きます。
以上の行程を、各部材の切断する向きに注意しながら残り3回繰り返すと、全ての切断が完了します。
切断が終わり、4つの部材を組み上げて確認してみて下さい。
治具の修正の仕方
4ヶ所の隙間はどうでしょうか?
もし、隙間が出来ている場合の原因は、下記が考えられます。
1.治具の基盤部の頂点の直角が確保出来ていない。
2.治具のフェンスに部材を重ねた時に、隙間が出来ている
3.のこぎりフェンス側の穴が大きいため、ダボに差し込むとぐらついている
4.のこぎりガイドのフェンスが、のこぎりを動かすと左右に動いてしまう
最初から治具を作り直さなくても、問題の箇所だけを修正したり、強度を高めて再度挑戦してみて下さい。
一度治具が出来てしまえば、その後はもう苦労することはもうありません。
まとめ
如何だったでしょうか?
一発で治具は完成したでしょうか?
少なくとも部材を1本づつ45度に切断する加工に比べれば、この治具の製作は、それほど難易度の高い加工ではないと思います。
この治具のミソは、のこぎりのガイドフェンスが仮にぴったり45度の角度に切断されていなくても、隣り合う部材を合わせると90度になって隙間が出ないことです。
人間の目はとても敏感にゆがみや隙間を見抜きますが、さすがに正確な45度かどうかまでは判別出来ません。
木工DIYで大切なのは、その切断角度が分度器で測って45度かを確かめるのではなく、44度と46度であっても4辺の全てに隙間のない切断が出来ることです。
額縁は、板厚も幅も丸ノコを使うほどのものではないものがほとんどだと思います。
是非、この治具を使って額縁を作り、大切な写真やポスターを入れて、あなたの大切な人にプレゼントしたら、きっと喜ばれると思います。
また、額縁以外の他の家具等の製作に応用して頂けたらと思います。
この45度の切断という難易度の高い加工が自分のものに出来ると、その作る作品の出来栄えは木工の初心者とは思えないものになっているのではないでしょうか?
もし、この記事に書いたことがマスター出来たら、その先の額縁の四隅の強度とアクセントになる「ちぎり」加工や額縁の飾り面取りの装飾について、下記記事で紹介しています。
是非、そちらも参考にしてみて下さい。
以上