電動工具と手工具の特徴
工具を電動工具と手工具の2つに分け、その特徴を比較して表にしてみました。
項目 | 手工具 | 電動工具 |
作業音 | 静か | 作業音の大きなものが多い |
習得期間 | 習得に時間がかかる | 比較的短時間で習得が可能 |
加工時間 | 時間がかかる | 短時間で済む |
値段 | 数千円のものが多い | 数千円から数万円 |
危険度 | 低い | 高い |
電動工具が効率的でおすすめ
この比較表を見て、効率的なのは、電動工具の方だと言えます。
値段も高いと書きましたが、ほとんど高くても、1万〜2万円で手に入ります。
他の趣味のゴルフなどに比べれば、木工は道具に掛かる費用はかなり安くて済みます。
ただ、問題なのは、作業音が大きい点と危険度が高いという点です。
電動工具の問題点の作業音を確認
作業音について、「大きい」「小さい」と漠然と言っても、自分で持っていない電動工具の作業音については、ピンと来ないと思います。
私は、このサイトでは難易度が高い手工具ではなく、電動工具を使うことをお勧めしていますので、その参考のために、自宅の掃除機の音と自分の持っている電動工具の作業音を確認してみました。
メーカー | 機種名 | db | |
電動ドライバー | Ryobi | CDD 1010 | 65 |
インパクト ドライバー | BOSCH | PSB10,8 LI-2 | 65 |
丸ノコ | Hitachi | C5uBY | 71 |
トリマー | Ryobi | TRE-55 | 70 |
ジグソー | Ryobi | MJ-300 | 70 |
オービタル サンダー | BOSCH | GSS 230AE/MF | 72 |
ランダムアクション サンダー | BOSCH | GEX 125C/MF | 70 |
集塵機 | Kerv | DC-90R | 62 |
家庭用掃除機 | Hitachi | – | 63 |
*スマホのアプリ「騒音測定器ーSimple Sound」で測定
全般的な傾向としては、家庭にある掃除機の約10dbぐらい大きな音がすると言えます。
電動工具の場合、聴感上での空転時と作業時では、作業時の方が音が大きく感じますが、数値としては思ったよりも、変化はありませんでした。
これは、特に丸のこ・トリマー・ジグソー等の場合、作業時に木を削る音の中に高音が入ってくるため、人間の耳には高音が特に耳にうるさく感じるからだと思われます。
私の持っている丸ノコ・トリマー・ジグソーは本体には回転数を変える機能はありません。
この中で、ジグソーだけは「スピードコントローラー」を付けて回転数を下げて使用しています。
【スピードコントローラー】
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表の数値は「スピードコントローラー」を付けない数値なので、丸ノコとトリマーにも回転数が変えられる機能を持つものなら、もっと静かなものになっているでしょう。
この電動工具の騒音を少しでも小さくするためについては、次の記事でお話をします。
また、別の記事でも、静音に配慮した電動工具を紹介してお勧めしています。
そちらの記事もこの私のデーターと共に参考にしてみて下さい。
電動工具の作業音を低減する3つの方法
住宅街に住んでいる方が、電動工具を使うことに躊躇してしまう最大の理由は、作業時に発生する作業音が近所迷惑にならないか、ということだと思います。
電動工具の作業音が大きくなる原因は、電源を入れたことでモーターが高速で回転する機械音と、刃先が木材に触れ、木が削られることで作業音がさらに増幅することで発生します。
逆に言えば、そのモーターの回転数を落とすことが出来れば、作業音を小さくすることが出来ます。
工具の作業音の問題を解決するには、3つの方法があります。
その方法を次に紹介します。
1)回転数コントローラー付きの工具を使う
比較的大きな作業音が出る電動サンダー、ジグソーには、本体にモーターの回転数をダイヤルを回して、コントロール出来る機種があります。
回転数が落ちれば、当然その切断力や研磨力は落ちて行きますが、工具の作業能力と作業音を見ながら、ギリギリの回転数を探って行きます。
私は電動サンダーを、広い面を扱うランダムアクションサンダーと、平面を出すオービタルサンダーの2台を持っていますが、どちらも回転数コントローラー付きの機種です。
通常使う時には、マックス10の目盛りを5か6にしていますが、特別研磨する力に不足を感じたことはありません。
特別に削りたい箇所が多い場面では、目盛りを上げれば力強い力を発揮してくれます。
デメリットは、コントローラー付きの機種は価格が高くなる点です。
スピードコントローラーを使う
工具を繋げることで工具のモーターの回転数を調整出来るものが、「スピードコントローラー」です。。
仕組みはシンプルで、コントローラー本体にAC電源の回転数を落としたい工具の電源を繋ぎ、中央にある回転数調整ダイヤルを回し、調整するものです。
下記は、私が使用しているコントローラーですが、ホームセンターで5,000円ぐらいで購入したものです。
【スピードコントローラー】
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原則、スピードコントローラは、モーターの回転数を変える機能が付いていない工具に使用するものです。
私の持っている、スピードコントローラーの付いていない安価トリマーとジグソーに繋げると、回転数を変えながら作業が出来ます。
実際にスピードコントローラーを使ってみて、今まで作業音が大きかったトリマーとジグソーの作業音は、びっくりするほど低減しました。
作業音が低減すると、近所迷惑になることを気にせずに工具を動かすことに集中が出来ますので、住宅街の自宅で作業をする方には、とても効果は大きいものです。
ただ、私のもう一台のメインで使っているリョービ製のトリマーでは、スピードコントローラーには反応しませんでした。
これは、この機種には電源を入れると、回転数が徐々に上がって行く「ソフトスタート」機能と、固い面を感知すると自動で回転数を調整する機能が付いているためだと思われます。
逆に言えば、機能の少ないシンプルな構造の廉価な工具の騒音対策には、このスピードコントローラーは、活躍する場が多いと言えそうです。
【電源コード差し込み口】
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3)レンタル工房を使う
そうは言っても、住宅街のマンション等の集合住宅では、どうしても作業音は気になってしまうと思います。
そんな方には、ホームセンターの工作室で作業が出来ないか、確かめてみてはどうでしょうか?
また、全国にあるレンタル制で作業場所を提供してくれる工房で作業することも、視野に入れてみて下さい。
自宅の近くにレンタル工房ないか、「木工 レンタル工房 (お住まいの地区)」で検索してみて下さい。
中には、各種の小型工具から大型工までその場で貸し出してくれたり、作品を実際に作りながら教室形式で教えている場所もあります。
有料ですが、作品を完成するまでの工程の中で作業音が大きくなる、切断、トリマー加工、電動サンダーでの仕上げ等の作業に限定して作業を進められれば、落ち着いて作業が出来ます。
家では組み立て、接着、ネジ止め、塗装等、作業音が問題ないものをして行きます。
私も一時期、車で30分ほどで行けるレンタル工房を見つけ、何回か作業をしたことがあります。
デメリットとして、費用が掛かる点と必要な部材や工具を準備したりする時間が掛かることです。
また、地方にお住まいの方は、レンタル工房より、ホームセンターの工作室がある可能性が高いと思われます。
別の記事「木工DIY初心者が上手くいかない理由」の中のホームセンターの工作室と東京近郊のレンタルスペースで、ホームページを紹介していますので、興味のある方は、そちらも御覧下さい。
電動工具の危険度を低くする方法
電動工具の中で比較的危険度が低いものは、電動ドライバー、ボール盤、ジグソー、電動サンダーかと思います。
それに対して、歯が剥き出しで高速で回転する丸ノコとトリマーは危険度は高くなり、取り扱いには充分に注意する必要があります。
電動工具を操作する時には手袋をしない
指を電動工具の刃から保護するために、手袋をして作業をすることは、かえって危険です。
回転する刃に手袋が巻き込まれた時を想像すると分かって頂けると思います。
刃先に指先を触れる作業時には、電源ケーブルを抜いておく
このことは、電動工具全ての取り扱いで必要なことです。
特に電動工具の刃先の交換作業で指先が刃に触る時には、誤ってトリガーであるモーターの開始ボタンに触れても刃が動き出さないようにしておく必要があります。
電動工具の刃を下に向けて加工する
電動工具の高速で回転する刃を下に向けて作業をすることで、電動工具の危険度をかなり低減出来ます。
一般的には丸ノコやトリマーを使う作業では、海外で多い、テーブルソーやルータ・トリマーテーブルで作業するのを多く見かけます。
この加工法は、テーブルの裏面から丸ノコやルータートリマーを固定し、刃が上向きの状態で回転された刃に向かって作業者が部材を近づけ、切断や削り落とす作業をして行きます。
この加工で事故が起きやすい現象に「キックバック」があります。
キックバックとは?
・スイッチを入れると刃は前方に向かって動き出し、部材を刃に当て、切断が進むと、先端に出来た切断面の隙間が徐々に狭くなって行きます。
・その隙間が狭くなると、回転する刃の抵抗になり、そこに部材を押し込む力が増し、刃の動きに逃げ場がなくなると、部材が押し込む方向とは逆の作業者の方向に部材飛んで来る現象を言います。
固い木の部材が作業者の身体の正面に向かって飛んで来ることになるので、場合によっては大きな事故に繋がります。
丸ノコの切断で起こるキックバックとその防止策についての詳細は、別の記事「丸ノコの使い方」を参照してみて下さい。
テーブルソーでは、そのキックバックを防止するために、刃のすぐ後ろに刃の切断面が一定の間隔以上狭まらないようにプレートを設置しますが、安全のためには必須のものです。
【テーブルソーの切断】
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【トリマー・ルーターテーブルの加工】
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このサイトでは、それとは逆に、部材を固定し、丸ノコやトリマーの刃は下に向け、工具の方を動かして部材を加工する方法を紹介していきます。
別の記事「トリマーガイドの自作」では、トリマーの刃を下に向けて使い直線の加工をする治具について、作り方の詳細を説明しています。
また、そのトリマーガイドの使い方については、「自作トリマーガイドの使い方」等、各種トリマーについての記事も参考にして下さい。
この加工方法の最大のメリットは、部材が固定され、丸ノコもトリマーも高速で回転する刃が下に向けられることで、危険度が大幅に低くなることです。
デメリットとしては、加工で発生する木くずの集塵がテーブルソーやルーター・トリマーテーブルに比べて劣ることです。
ただ、私は電動工具の作業の危険度をより低くすることは、趣味で木工をして行く上で、最も優先すべきものだと考えますので、この方法を強く推奨します。
この方法で安全に電動工具を扱い、正確な加工をするために治具を使うことで、手工具よりも格段に見栄えいい作品が出来るようになります。
丸ノコの刃を下に向けて、正確な切断をするためには、自作の丸ノコ治具を使えば、より安全に切断作業が出来ます。
別の記事の「静音と正確な切断のための機能を持つお勧めの丸ノコを紹介」や「丸ノコ治具の自作」「丸ノコの使い方」も併せて参照してみて下さい。
手工具も効率化して行く
のこぎりは替え刃式を
どの家庭にもある手工具の典型であるのこぎりは、とても熟練が必要な工具です。
真っすぐに切ることと同時に、切断面がきちんと直角に切れている必要がありますが、趣味の木工では、その域に到達するのは、至難の業です。
そこで、のこぎりにも治具を使えば、初心者の方でも、かなり正確な直線と直角の断面を持つ切断が可能です。
替え刃式のこぎりのメリット
治具を使えば正確な切断が可能
下記画像は「ソーガイドF」という商品で、丸い箇所の下にのこぎりの刃の上部を挟み込むことで、のこごりで切断を開始すると斜めになりそうになる刃の向きを部材に対して直角を保ったまま切断が完了します。
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丸い形をした刃を挟む箇所と左側に伸びた箇所は直角なので、長い部材でも、治具の左にガイドになる当て木をすれば、治具を少しづつ後ろに移動させていけば、長い寸法の直線切りも真っすぐに進めていけます。
また、替え刃式のこぎりの刃は下方だけなので、治具に下からのこぎりを挟み込んだ場合、切断作業で刃を前後に動かしても、上部の刃を痛める心配はありません。
また、刃を挟むガイドは角度を自由に変更できますので、45度に傾斜させて切断することも可能です。
刃を挟み込む隙間はゼットソーの替え刃式の刃と厚みがちょうど合うため、切断が終わるまで安定した作業が出来ます。
用途に応じた刃を交換出来る
替え刃式のこぎりのもう1つのメリットは、使う用途に応じて、刃を交換出来る点です。
厚めの材の場合には、荒めの切れ味の良いものを、切断面を出来るだけ綺麗にしたい繊細な切断の時には、細目に交換するといった使い方です。
刃が錆びたら交換する
手工具の落とし穴として、どの家庭にもあるのこぎりやかんな等は、使う頻度から言って、年月を経るとその刃は徐々に錆びてしまい、切れ味も悪くなって行きます。
切れ味の悪くなった工具は危険度も増して来ます。
切れ味が悪いと、必要以上に力を加えてしまい、部材から思わぬ方向に刃が向いて、怪我をしてしまう可能性が大きくなります。
プロの職人の世界では、ノミやカンナの刃は自分で研ぎ、それが出来て初めて実際の作業をさせて貰えると聞きます。
ノミやカンナの刃が一人前に研げるようになるには、何年も掛かると言われていますし、のこぎりの歯を外部に研ぎに出すほど高価なモノをお持ちの方も少ないと思います。
作業時間や工具の使用頻度が限られている趣味のDIYで木工をするには、のこぎりとカンナは替え刃式のものが、一番効率的です。
ソーガイドを使ったのこぎりの使い方の詳細は、下記別の記事「のこぎりの使い方のコツ」で紹介しています。
替え刃式のこぎりとカンナのお勧めは?
【替え刃式のこぎり ゼットソー】
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のこぎりは、定番の「ゼットソー265」とそれよりも細目で切り口の綺麗な「ゼットソー8寸目」がお勧めです。
標準的な「ゼットソー265」(翔の場合も265)と切り口がより綺麗になる細目の「ゼットソー8寸目」(翔の場合は翔250」の両方があった方が用途に応じて使い分けが出来ます。
両刃とも取っ手付きのものを2本買うより、取っ手の部分は共用出来るので、刃だけを追加し、使用目的に応じて刃を交換して使っていけます。
鉋(カンナ)も替え刃式を使う
鉋(カンナ)は大き目のサイズ50mm程度のものと小さな42の2つがあると困りません。
【サイズ50mmと42mmのカンナ】
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ただ、手工具としての鉋(カンナ)の使用用途は、広いを均一に平面にするような作業は、素人の手にはとても負えない難易度の高い作業です。
あくまでも、切断面を補修する程度の工具と割り切って下さい。
のみ
のみを使って、所定の箇所を正確に掘って行くことは、最も難易度の高い作業です。
【一般的なのみ:刃先8mmと15mm】
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このサイトでは、初心者の方でもほぞ穴加工が出来るようにトリマーと治具を使う方法を紹介しますが、そこでのみを補助的に使用します。
それ以外でも、部材の修正等で使用する場面もありますが、使用頻度は少ないので、替え刃式ではないものでもいいと思います。
刃先は大(30〜36ミリ)中(24〜18ミリ)、小(9〜6ミリ)と3サイズあれば、充分です。
まとめ
手工具と電工具を色々な面から比較してみました。
手工具は、どの家にもある玄能やのこぎりといった馴染みのある工具ですが、とても習得するには時間が掛かる難易度の高い工具です。
それに対して電動工具は、安全な使い方をきちんと守れば、習得時間も少なく、短時間の作業で、出来ばえのいい加工が可能です。
このサイトでは、そんな電動工具の使い方の手順と秘訣を切断・加工・接着・下地処理といった木工作業全般について作り上げる作品がレベルアップ出来る方法をご紹介しています。
併せて他の記事もご覧になってみて下さい。
以上